エッセイ80-Essay80-1999.12

< 年の瀬に想う>
 

 あわただしく月日はながれ、ことしもあと4日で終わろうとしている。
 静かに振り返ると、矢の如く飛び去った日々にもかかわらず、胸に充実感がある。ではこの1年間に私は何をしたのだろうか。

 大学生だから当然勉強をした。取得単位数も30くらいになる。卒業要件のほぼ4分の1だから、かなり順調だったことは間違いない。そして学んだことが即子供達への授業に生きて使われているので、そういう点でも有効であったといえる。これは大きい。自分が勉強する上で張り合いとなるからである。

 森での生活も充実していた。雪解け直後から森にはいり、大量の白樺樹液を採取した。

ユキザサ
ユキザサ

 今年は自分だけではなく、例年重い花粉症にやられる知人にも届け共に花粉症を免れた。これも嬉しいことであった。どの病もつらいものだが、花粉症もこれまたなんとも、うっとおしいものだ。これでその薬効に疑問の余地はない。これからは春の花粉症で苦しむ人々に自信をもってすすめていこう。

 森の整備も1段とすすみ公園がずいぶん広くなってきた。そこに咲きでる草花もますます種類を増やしており、今後どのような花が姿を見せるのか、大きな楽しみである。その可憐な姿を相当数カメラにおさめた。ここ数年間に撮りためた画像もかなりのものになり、電子化され保存されている。

 私のデジタルカメラの性能では芸術写真にはならないが、記録としては貴重だ。

 今年の紅、黄葉はこれまでに経験がないほど鮮やかであり美しいものであった。
まず、期間が10月上旬から11月上旬と、例年の倍近くも続いた。
気温がやや高めに経過したことがその原因であったかもしれない。

 しかも広葉樹と針葉樹のカラ松の両方が揃って、あそこまで完璧に紅、黄葉することなどは、私が森に注目を始めたここ15年間に1度もなかったことである。


 紅葉画像だけでも500枚位は撮ったであろう。
十二分に堪能した。

 あらためて感じたことだが、ログハウスで勉強すると、大変能率が上がる。
 それは6畳足らずの小さなものだが、築3年たった今でも中はさわやかな木の香に満ち満ちている。
 通常、試験のひと月まえくらいから勉強を始めるのだが、そこにこもると3時間くらい完全に没頭できるので、一区切りついた際、自分がどこにいるのか解らないほどである。記憶力がずいぶん蘇ったかのように思われるのだが、これは木の香が私の脳を活性化してくれているからに他ならない。

 実例を挙げると、9月に英語の試験を受けたのだが、50ページにわたる
英語の文学作品をひと月で完璧に暗記できたのである。その結果試験でも満点を取ることができた。これは私の頭脳が明晰だと言うより、先述の如く森やログハウスの応援あればこそなのである。

 流氷期、それと対話することからからはじまり、雪解けを待ちかねて森を歩き、時が過ぎ、また雪の中で眠るまで、草花や樹木、鳥、虫、魚、キノコなど様々な生き物達と交流しながら過ごしてきた。こうしていちいち挙げてみると、やはり充実した日々を積み重ねていたことが実感される。


 
思うに、人生の後半部にさしかかって、かくも充実感をもって暮らせることは本当に得難いことだ。

 かつて、逃れようもなく次々襲い来る苦難に翻弄され、歯を食いしばり、目をつり上げるようにして通り抜けてきたが、それだけ一層現在の穏やかな毎日が勿体なくも有り難い。

 ふと見回せば人生の晩年に差し掛かってもなお、苦悩する人の姿も見受けられる。これからは、私をくるんでいる日溜まりの暖かさを手にとって、その人の肩にそっとのせてあげよう。こわばった心模様がいささかなりとも柔らかさを取り戻せるように。


ご意見・ご感想をお寄せください。
mail :
ny-kaba@js2.so-net.ne.jpメール